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いつかあの空へ…

TWの片隅で不定期に更新予定。ある獅子の記録…。

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喧騒と静寂

あいつが出かけていくのを見た。
…これで、しばらくは、俺一人。



大層な用事もなく、スピリット達を喚ぶ
本棚の上で羽を休め、当たり前とも言わんばかりにこちらを見てくる
緋翔、俺の少し前を様子を伺いながら歩く狼姫
前者2匹と違い、どことなく落ち着かない様子の誓夜

「……別に何処にいなければならない理由はない。好きな所で休むといい」

声を掛けるとやや大きな体を扉の前に落ち着けた
知ってか知らずか、これで訪問者を通すことは出来なくなったのだが
旅団内の猫とアイツ以外に俺の部屋を訪問しにくる人物はそういない

俺が普段、誰かをこの部屋に通したいと思っていない事と
本の山が多く建築されているせいであまり足場がない為
通された人物にとって、楽しいものが何もないと自負しているからだ


「他の趣味も、探索していかなければならないと…思ってはいるんだが…」
昨日読みかけにしていた本を手に取り、所定の位置に座り込む
狼姫が寄り添うように座って来たが、これもまたいつものこと
俺の独り言に、鼻を鳴らして、狼姫が応える
その声はまるで『外に行けばいいのに』とでも言っているかのようだった
「……とりあえずは、この本を読んでからでも、良いだろう?」
狼姫も視線を浴びつつ言葉を返すと、スピリット達が一斉に昼寝の体勢をとり始める
彼らの言いたい言葉はその仕草一つで良くわかる
つまり、『……そう言うと、思ってた』










星霊スピカの齎す日差しが、だんだん陰り、時間が進んでいくのを確認した
今日もまた、どの時間帯から読み始めていたか、思い出せない
集中しすぎる、悪い癖だ

『…お?休憩か?』
これもまた、気づかなかったこと
誓夜が閉ざしていたハズの扉を超えて、同居人が部屋に戻って来ていた
『帰宅してみりャあ、扉が開かねェ!極度の嫌がらせかと思ッただろ』
表情は諦めに近いが、悪戯者特有の笑みがある
そして、言葉から呆れているのが読み取れた
『ま、俺様にしてみれば時々あんなサプライズがある位が世の中を楽しめるんだけどなー』
「……いつ、戻ってきた」
『へへ、それを教えたらつまんねェだろ。ライソウル・ミステリーのひとつにでもしとけッて!』

この部屋に怪しげなミステリーを加えられた所で、収集する気はない
俺をからかって言っているのも目に見えている
会話をやめ、再び読書に戻ろうとする俺に、同居人は更なる追い討ちを掛けてきた


『ところで、お前…………』
















『……心此処にあらず、ッてか?』

同居人は語る
俺が昨日一昨日、その前と全く同じ本を読んでいる、と

「……」
『図星かァ、予想通りだ』
『ま、お前の考えてる事はお前の顔に書いてるんだよな。つーか、バレバレ』

読んでいる本の内容があまり頭の中に入ってこないのは、確かだ
だからこそ、何度も何度も繰り返して読み返していた
何度も読めば、必ず頭に入るから、とも、理解していたから

『お前が、俺の居なくなったタイミングを見計らって、出歩いている事も』
『……その目的地がどこであるかも』

顔に書いてある、と同居人は言った
つまり、憶測の領域であり、真実は俺だけが知っている
だが、同居人の推理は多方当たっている
決して、正解であるとも、不正解であるとも答えるつもりはないのだが

『たまにはてめェも素直に、へへ、正面から行けば良いのにな……ククク』
にやりと笑う同居人は最後にその言葉を残し、腹を抱えて笑いだした
爆笑ではなく、忍び笑いという辺り、完全にバレているのだろう
外出を装い、サーチウィズフレンズで後を付けられている気がしてきたが
同居人なら、やりかねない




本で顔を隠し、同居人の視線を地味に回避しておいた
ひとつ深めの深呼吸を零し、少し冷静になって状況を整理していくと
扉前に居たはずの誓夜が、いつの間にか姿を消していた事に気がつく
「……ふふ」
周囲を観察すると、寄り添っていた狼姫のすぐ横に誓夜は居た
誓夜の上には緋翔の姿もある
同居人が入ってこられた理由は、そう、真横にあった
「………素直に、か」









同居人の目を盗んで出掛けていた場所
それは……ラッドシティのとある貧困街

     誰かの姿を…見かける為に……
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プロフィール

HN:
ゼルガ
性別:
男性
趣味:
読書
自己紹介:
弓を愛する、白い獅子。
帽子を愛する、白い狼。
同居人、黒い犬。


白の住人は、気まぐれ無口
…喋るときは良く喋るケド。
唯一共通するのは
両耳の一対の紅いカフス。

黒の住人は、気まぐれ遊び
戯れに、そして、戯れに。


狼姫荒哉(銀雨)
狼姫兎斗(サイファ)

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