遺跡と冒険

(本をぱたりと閉じて、少量の髪をつまむ)
…やはり、伸びたようだな

此処まで伸ばす日が来るとは俺も思っていなかったが…
…そうだよな、アクスヘイムを発ってから
一度も髪を切った覚えがないし、当然といえば、当然か

お洒落とやらに今まで気を使ってこなかったから
服装にも色々、無頓着なのも頷ける
白い色なら、飽きずにずっと大事にしていられると思っていたからな

「ほら、てめェにも必要だと思ッて用意しておいたぜッ！」
黒の同居人が、サンダルを手渡して来なかったら
…多分、サンダルの存在を忘れていた
もしかしたら水着にブーツなんて、異質な事をしていた可能性もある

サンダルの入手ルートを訪ねたら、去年自分のと一緒に買ったらしい
白黒２色のサンダルがセットで売っていたから
いつか、俺が水着を購入してきたらさりげなく渡すつもりであった、と
……それならそれで、去年の段階で渡してくれれば、いいのに、な


狼姫に被せたのは、俺の帽子コレクションのひとつ
…いや、手作りに見せかけているだけで、あれはアクエリオで購入したものだ
作るのは好きだが、俺は狼帽子を被っている方が好きだから…
普段はただただ、部屋の隅に飾ってあるだけだし……


いつも少々内気だから、こういうイベント事じゃないと
…なかなか顔を合わせる機会がないが…
あの日、誘って貰えて何だかとても、嬉しかった
こういう場合、俺から誘うのが王道、らしいけど、な
……あぁ、あの時ベルに言われたのも、こういう事か…

…水着のコンセプト？
あぁ、殆ど普段着と変わりないが、狼姫に被せたあの帽子…
……白い海賊、を目指したんだ
俺が海賊だったとしても、色白過ぎて似合わない気がするんだが……
それはそれで、目立ちそうだよ、な