真実

誕生日か…

俺の記憶が正しければ、俺が自分の真実を直向きに隠し始めた日でもあったハズだな。
…なぁに、(数年後ということで)酒を口にする日もある。

「口が滑る」という言葉もよく聞くが…
例え、俺がうっかり喋ってしまったとしても、仕方がない…

今からするのは…ただの酔っ払いの独り言だ。
…本気にするなよ…？

昔、俺は無邪気な奴だった
それはもう…蒼紫狐にも勝るくらいな？


…良く笑う子なのに、とても落ち着かない奴だと言われたのを覚えている


だが、いつの間にか寡黙になり…
大事に思う人たちの前でしか、笑うこともなくなって行った


それは…１つの事件
……それは心を閉ざすような出来事


……当時の俺は、大きくて真っ白いもこもこした犬を飼っていた
笑ってるようにも見える、特徴的な奴で…
「コーヤ」と名づけたその犬と俺はとても仲良しだった

俺は右の耳に、「コーヤ」は左の耳に紅いカフスをつけてな
お揃いのワンポイントアクセサリーをつけて遊んだりした


楽しかった思い出の節目に…「コーヤ」は俺を庇って怪我をした
自然に起こる災害ってものがあるだろう？
何があって、そうなったのか…当時の俺には分からない

だが、時が立って、見聞を広げる為の旅に出て…
それがようやく『カマイタチ』だったのだと知ることができた



…まぁ、その後の旅の先にある話は……皆の知る通りさ
旅団でみんなと出逢った、と…




だが、この話を良く知るハズの蒼紫狐と俺の記憶に相違があった
記憶のズレが、此処にもあったとは…
その時、確かに俺は言われた…

「僕の描いた絵が実体化するわけないでしょうに。そして何より…」
「お前は、犬なんて初めから飼っていなかったじゃないか」
「僕のスケッチブックにいるコイツは、夢のセカイの住人にしか過ぎないんだよ」と。


夢か幻か、はたまた現実だったのか…分からない
ただ、この紅いカフスだけが真実を告げているのは間違いないハズなんだがな…